
女性学第一人者 上野千鶴子(うえの・ちづこ) 1948年生まれ。認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク理事長、女性学・ジェンダー研究の第一人者 (c)朝日新聞社

ミス東大 神谷明采(かみや・あさ) 2000年生まれ。1浪後、東大に入学。教養学部文科二類1年。20年度ミス東大コンテストグランプリ (事務所提供)

総長賞受賞 山口真由(やまぐち・まゆ) 1983年生まれ。財務省、法律事務所勤務を経て、ハーバード大ロースクールに留学。テレビコメンテーターも務める (事務所提供)
東大名誉教授で社会学者の上野千鶴子さん(72)、総長賞を受賞して東大法学部を卒業した信州大特任准教授の山口真由さん(37)、2020年度ミス東大の神谷明采さん(20)の3人が「東大女子」について語り合った。東大は学部生の女子の割合が2割を超えたことがない(※現在19.5%)。低い理由は? どうすれば高くなるか?
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神谷:女子が東大を卒業するメリットはどこにあると思いますか。
山口:学歴を言い訳にしなくて済むのはよかった。仕事に邁進(まいしん)できる。結婚せずに自分の収入で生きていけるというのも選択肢になりますね。
上野:卒業生を見ていると、東大女子たちは自分の能力に疑問を持っていない。例えば、国際機関で働きたいとか平気で言える。もう一つはお金に頓着しないで仕事を選べて、会社を自由に辞めることもできる。男は職場にしがみつくけど、女はしがみつかないわね。
神谷:私は将来やりたいことがまだないけど、東大なら望んで努力すれば、きっと何でもできる環境なんだろうと思っていました。
上野:「望んで努力すれば何でもできる」と思えることが東大生であることの一番のメリットなんですよ。
山口:その半面、システムにはまれないと自分が悪いという方向に行ってしまうことがあるんです。システムが悪い、あなたは悪くないよ、となれば、活躍の幅はもっと広がってくると思う。
上野:望んで努力したら手に入ると思った女たちには罠があるんだよね。エリート女ほど自己責任論になる。女だからって言い訳をしたくないのよ。
山口:そこはフェミニストの人を悪く描いてきたメディアの責任もあると思います。(女性学研究家の)田嶋陽子がまたがなっているみたいな。
上野:田嶋さんって知っている?
神谷:知らないですね。
上野:そういう世代の人たちも出てきているのね。
神谷:東大をめざす女子が少ないことも問題だと思います。私の周りには、結婚して幸せになることに憧れを抱いている子が多いです。