陛下は王室の状況は承知しているが、「制度に関わる事項について、私から言及することは控えたいと思います」と述べた。憲法に「国政に関する権能を有しない」と定められている立場からは当然の回答だろう。
■「愛子天皇」なら変わる
ここで突然、森喜朗さんの話に論を移す。「女性がいる理事会の会議は時間がかかる」という発言から始まった東京五輪・パラリンピック大会組織委員会会長交代劇が見せてくれたのは、森さんだけが森さんでないという事実だと思う。日本のジェンダーギャップ指数が世界121位なのはそのためで、変えるにはクオータ制導入しかないと個人的に結論した。強制的に女性を増やさないと、森さん的なものはなくならない。
そしてもう一つ、個人的に思っているのが、日本を劇的に変えるのは「愛子天皇」ではないか、ということだ。実現すれば、とてつもないカルチャーショックとなる。何より女性たち、そして未来を生きる若い人たちは励まされ、自信を持つに違いない。
勝手な思いでしかない。が、陛下だからこその期待だ。陛下は今回の会見で、雅子さまのことを「私の日々の活動を支えてくれる大切な存在であるとともに、公私にわたり良き相談相手となってくれております」と述べた。お二人の対等な関係は、令和の定番。その先に「ジェンダー平等」があるのでは、と夢想する。
ただし、以上はすべて、愛子さまのお気持ちは外して考えたことだ。世論の大多数が「女性、女系天皇」を容認していても、それをご本人とご両親が容認しているのかはわからない。皇位継承を考える上で、国民としてぜひ知りたい。だが、憲法がそれを許さないことも承知している。令和の皇室を思うとき、堂々巡りがつらい。(コラムニスト・矢部万紀子)
※AERA 2021年3月8日号

