カナヲが童磨との戦いで劣勢になった時、仲間の伊之助が乱入する。「怪我したらお前アレだぞ しのぶが怒るぞ!!」という伊之助の言葉に対して、自分の身を真剣に案じてくれる「姉」を失ったのだという悲しみが、カナヲの心に押しよせる。「悲しさ」という感情が、カナヲの心の最後の壁を破った。

「きっかけさえあれば 人の心は花開くから大丈夫」

 そう言ったのは、胡蝶カナエだった。大切な「姉」の喪失が、カナヲに心を取り戻させた。優しい姉、カナエとしのぶは、カナヲを置いて父母のもとへ「帰って」いってしまった。

 カナヲはこの世に取り残されてしまうが、炭治郎や伊之助をはじめとする、真の仲間が、その後もずっとカナヲに寄り添ってくれる。悲しみを乗り越えて花開いたカナヲの心が、「ごめんなさい」の言葉で埋め尽くされることは、もうない。

◎植朗子(うえ・あきこ)
1977年生まれ。現在、神戸大学国際文化学研究推進センター研究員。専門は伝承文学、神話学、比較民俗学。著書に『「ドイツ伝説集」のコスモロジー ―配列・エレメント・モティーフ―』、共著に『「神話」を近現代に問う』、『はじまりが見える世界の神話』がある。

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