この話は今からもう10年も前のことです。でも、現在運営しているNPOには、当時の私と同じ悩みを抱えたママたちからの相談が多くあります。

■障害のある子と接する機会が少ない

 10年の間に社会にバリアフリーという言葉が浸透し法律も何度も変わったのに、どうして母親たちの孤立は変わらないのでしょうか?

 私はその理由のひとつは、社会が障害のある子どもたちに接する機会が非常に少ないことのような気がしています。実際、日本での就園も就学も医療的ケアも、柔軟性はその園や学校に前例があるかどうかで大きく変わります。

 アメリカでは、小さな頃から障害に限らずマイノリティーの子どもたちと一緒に育つことが多いので、自然にどういう支援が必要なのか?どうすれば一緒に生活できるのか?を考える力をそれぞれが持っているのだと思うのです。

■「みんな同じ子ども」

 実は、私自身も長女を育てるまでは障害について何も知らず、大変失礼ながら少し怖い存在にも感じていました。でも、寝たきりの長女もはっきりとした感情を持つ人間であり、次女や息子と同じ大切な子どもです。

 もしも社会全体がもっと障害のある子どもを見慣れれば、理解が深まり、母親たちはその存在を隠す必要も情報を求めて疲弊することもなくなり、気持ちが軽くなるのだろうな。育児に行き詰まったママたちからの相談を受け、ハワイでの生活を思い出すたびにそう感じます。

 この連載が、ほんの少しでも肢体不自由児の理解につながり、「みんな同じ子ども」だと多くの方に知って頂けたら幸いです。

〇江利川ちひろ/1975年生まれ。NPO法人かるがもCPキッズ(脳性まひの子どもとパパママの会)代表理事、ソーシャルワーカー。双子の姉妹と年子の弟の母。長女は重症心身障害児、長男は軽度肢体不自由児。2011年、長男を米国ハワイ州のプリスクールへ入園させたことがきっかけでインクルーシブ教育と家族支援の重要性を知り、大学でソーシャルワーク(社会福祉学)を学ぶ

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