野手では、高卒3年目の濱田太貴がそんな存在になるものと思っていた。持ち前のフルスイングで、このオープン戦では9試合の出場で打率.345、4本塁打、11打点と、初の開幕スタメンに向けて猛アピール。杉村コーチも「甘いボールを一発で仕留めるっていうのはできるようになってきた」と認めていた矢先に上半身のコンディション不良で離脱し、開幕絶望の見通しとなったのは残念で仕方ない。

 ただし、濱田の離脱や新外国人の来日の遅れ、あるいは現役最多のNPB通算173勝を誇る石川雅規の二軍スタートは、他の選手にとってはチャンスである。チームの野手最年長、39歳の青木宣親は以前「(若手でも)目の輝きが違う選手もいるし、逆に死んでる選手もいる。野心を持った選手が、1人でも多くなってほしい」と話したことがあるが、野手、投手を問わずチームにプラスアルファをもたらす選手がどれだけ出てくるか──。ヤクルトが2年連続の最下位から巻き返し、セ・リーグの台風の目となるかどうかは、そこにかかっている。(文・菊田康彦)

●プロフィール
菊田康彦
1966年生まれ。静岡県出身。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身。2004~08年『スカパーMLBライブ』、16~17年『スポナビライブMLB』出演。プロ野球は10年からヤクルトの取材を続けている。