荻上さんがこう話すのは、特に検挙者のうち再犯した人の割合を示す「再犯者率」に注目してのことだ。昨年1年間に警察が把握した刑法犯は61万4303件(暫定値)で、前年より17.9%減少している。戦後最少を6年連続で更新したといい、犯罪自体は減っているのが現状だ。そんな現状だからこそ、次のように考える。
「再犯者率を下げなければ刑務所などに再入所する数がより下がっていかないという面があります。そのための課題が具体的な包摂ケアだと考えています」
厳罰主義をめぐっては、前出の富永准教授は別の視点からも懸念を抱いているという。厳罰化による若年層の「萎縮」についてだ。富永准教授によれば、内閣府の国際比較調査では、「他人に迷惑をかけなければ何をしようと個人の自由だ」と考える若年層の割合は4割であり、他国の約2分の1にとどまる。
「厳罰主義を強めたときに一番怖いのは、さらにそうした『自粛』傾向が強まり、言動の萎縮につながる効果が発揮されることです。ルールを設定すると、若い人ほど、そのルール以上に自分の振る舞いを拘束しかねないのです」
影響はさまざまにあるだろう。慎重な議論が必要だ。(編集部・小田健司)
※AERA 2021年4月5日号