既に戦力となっている広島のルーキー栗林良吏 (c)朝日新聞社
既に戦力となっている広島のルーキー栗林良吏 (c)朝日新聞社
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 2016年からセ・リーグ3連覇を達成したものの、過去2年間はBクラスに沈んでいる広島カープ。昨年はチーム打率、得点がリーグ2位ながら、チーム防御率はリーグ最下位のヤクルトに次ぐリーグ5位と、完全に投手陣が足を引っ張った格好となってしまった。特に弱体化が顕著なのがリリーフ陣だ。3連覇を支えた中崎翔太、一岡竜司、今村猛の3人が勤続疲労から揃って戦力とならず、過去2年間抑えを務めたフランスアも開幕前に右膝の手術を受けて長期離脱となっている。昨年以上に苦しい台所事情となる可能性は高いだろう。

 ところがそんな心配はここまで良い意味で裏切られる形となっている。開幕11試合を終えて救援防御率は1点台と抜群の安定感を見せているのだ。そしてブルペンを支えているのが栗林良吏、森浦大輔、大道温貴のルーキートリオであることは間違いない。4月7日終了時点での3人の成績を並べてみると以下のようになっている。

・栗林良吏:5試合0勝0敗3セーブ0ホールド 防御率0.00
・森浦大輔:5試合0勝1敗0セーブ3ホールド 防御率1.93
・大道温貴:4試合0勝0敗0セーブ1ホールド 防御率0.00

 栗林は社会人、森浦と大道は大学で実績を残してプロ入りしているとはいえ、これだけ揃ってルーキーがブルペンを支えるという例はなかなかないだろう。また栗林は愛知大学野球の名城大、森浦は阪神大学リーグの天理大、大道は北東北大学リーグの八戸学院大といずれもいわゆる地方大学の出身であるという点も興味深いところだ。

 栗林はコンスタントに150キロ前後をマークするストレートと、決め球のフォークをいずれもコントロールよく低めに集められるのが最大の持ち味だ。真上から腕が振れ、上背以上にボールの角度も感じる。現在の調子を維持することができれば、現在投手コーチを務めている永川勝浩の持つ球団新人最多記録の25セーブの更新も視野に入ってくるだろう。

 森浦はストレートは140キロ台前半が多いものの、独特のボールの角度があり、打者の内角を思い切って突くコントロールも備えている。チームに待望の中継ぎ左腕として貴重な存在となっている。大道は全身を使った躍動感溢れるフォームから投げ込む150キロ前後のストレートが最大の武器。ボールの勢いはブルペン陣の中でも1、2を争うものがあり、チームに勢いを与える投球を見せている。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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