最終的に基準価額が平均購買単価より上昇すれば資産は増えるわけですから、一時的な下落で投げ出すのは、かえって損だと思います」
そのことがよくわかるシミュレーションを紹介しよう。
1万円の金融商品が7年目に2000円まで値下がりしたあと、10年目に5000円まで回復したとする。もし1万円のときに120万円すべてを投資していたら、10年後には半分の60万円に目減りしてしまう。
対して、月々1万円ずつ10年間に分けて投資した場合、2000円まで下落し続けた過程でもコツコツ投資を続けた効果で、10年後には120万円が約139万円に増える。
10年後に投資開始時点と同じ1万円まで価格が戻った場合、一括投資だと1円も増えないのに対して、つみたて投資なら120万円が約241万円まで増えている。
株式投資の場合、買えるのは最低100株からなので、数万円から数十万円の資金を一括で投資することになる。投信はネット証券なら1口100円から購入可能。そのため、元手が少ない人でも時間分散させやすい。
「『つみたてNISA』は、毎月決まった金額を月末や月初などに銀行引き落としなどで購入していきますが、ネット証券では『毎日』つみたてることもできます。
たとえば毎日100円や1000円など、100円単位で指定することができるんですよ。『毎日つみたて』は究極の時間分散投資です」
西尾さんが、毎日つみたてと毎月つみたての損益を徹底的に比較してくれた(図表参照)。2020年9月に発売された「AERA Money」でも同じシミュレーションをしたのだが、その結果が非常に好評だったので最新の相場で再び試算してもらったのだが……。
毎日つみたてと毎月つみたてを比べると、昨年来からの上昇一辺倒の相場では毎日つみたての方が不利になる局面もあった。
毎日つみたては、文字通り「毎日」買っていくので、毎日のように基準価額が上がり続ける相場では少しずつ平均購入単価が上がっていく。考えてみれば当たり前の話ではある。
また、「月初に毎月つみたてをした場合」と「月末に毎月つみたてをした場合」をそれぞれ「毎日つみたて」と比較すると、やはり収益が異なることがわかった。
毎日つみたての結果はもちろん変わらないのだが、毎月1回、月初につみたてた場合と比較すると毎日つみたてが不利。逆に月末につみたてた場合と比較すると毎日つみたてが有利。あくまでここ3年の試算結果ではあるが、参考までに。
先ほど述べたように、毎日つみたては上昇一辺倒の相場に弱い傾向がある。ただ、10年以上つみたてるなら、そんに長い間「上がり続ける相場」も「下がり続ける相場」もないので、毎日つみたてのほうが最終結果がよくなるのではないかと予想する。
――続きはアエラ増刊『AERA Money 2021春号』でーー
(取材・文/安住拓哉、編集部・中島晶子、伊藤忍)
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