「カーブス」利用者の平均年齢は57.4歳。利用料金は1カ月5900円もしくは6900円と、お手ごろ価格も人気のひとつ。「カーブス武蔵小山」で(撮影/写真部・関口達朗)
「カーブス」利用者の平均年齢は57.4歳。利用料金は1カ月5900円もしくは6900円と、お手ごろ価格も人気のひとつ。「カーブス武蔵小山」で(撮影/写真部・関口達朗)
この記事の写真をすべて見る

 フィットネスクラブといえば汗を流す男女が集う場所で、ちょっとは出会いも期待できるはず…というのは、どうやら一昔前の話のようだ。そんなイメージとはかけ離れているのが現状のようだ。

 そのフィットネスクラブは、おじいちゃんとおばあちゃんだらけだったそうである。

「イケメンとの出会いを少しは期待していたのですが…」

 トホホの表情で話すのは、都内に住む女性(35)。ぜい肉を落とそうと自宅近くのプール、スタジオ、マシンを備えた大手の「総合型フィットネスクラブ」に通い始めた。なのに、同年代は皆無で、両親かそれより上の世代ばかり。

 声をかけてくるのは、70代とおぼしきおじいちゃん。バイクをこいでいると「調子どう?」などと話しかけてくるのだとか。

「ロビーなんて高齢者であふれて、病院の待合室状態ですよ」などと嘆くが、今フィットネスクラブの「主役」は、若者からシニア層にシフトしているということをご存じだろうか。

 ある大手フィットネスクラブの資料によると、60歳以上のクラブ利用者は、2002年3月は17.3%だったのが12年3月には25%と1.5倍に増えている。50歳以上だと40%を超える。一方20代、30代は減り続け、30代は同年比較で24.6%から19.4%にまで落ちた。

「表向きはきれいなお姉さんをモデルに使いキャンペーンをしていますが、実際は、高齢者をいかにして取り込むかが、00年ごろからの重要課題でした」と別の大手フィットネスクラブの担当者は打ち明ける。

 シニア層増加の背景にあるのが、定年を迎えた団塊世代の大量退職だ。業界誌「フィットネスビジネス」を発行している「クラブビジネスジャパン」(東京)の社長、古屋武範(ふるや たけのり)さんが言う。

「60歳以上の人口の増加に加え、健康志向の高まりが大きい。しかも、多くのクラブは料金が定額制で、何回通っても同じ料金なのも魅力」

 シニア層は定着率も高い。かくして、フィットネスクラブにとってシニア層は「おいしいマーケット」(業界関係者)に。だがその結果、クラブは「ジジババだらけ」になり、若い年齢層の足が遠のく結果にもなったのだ。

AERA 2013年6月3日号