売買委託手数料、有価証券取引税、その他費用は金融機関の儲けにはならない。純粋な事務コストで、3つを合計しても1万口当たり3~4円程度だ。
 
 金融庁では、つみたてNISAの投信の信託報酬に関してもジャンル別に細かく上限を定めている。

 たとえば、日経平均株価など国内の株価指数に投資するインデックス型投信の信託報酬は0.5%以下、アクティブ型投信は1.0%以下、S&P500など海外のインデックス型投信は0.75%以下、海外もののアクティブ型投信は1.5%以下といった具合だ。

 実際には、運用会社の激しいコスト競争もあって、今や、日本株や米国株のインデックス型投信では信託報酬を年率0.1%台、いや0.09%台まで引き下げた「激安の投信」も多数登場。

「インデックス型投信の場合、運用自体はどれも株価指数とほぼ同じ動きになります。では、どの投信を選ぶか? やはり信託報酬に目がいきます」(西尾さん)
 
 信託報酬が0.1%以下という激安ぶりで、金融機関側に儲けは出るのだろうか? 

 投信には、あなたの資産を運用する運用会社、投信を販売する販売会社、運用資産を管理する信託銀行が関わっている。

 信託報酬0.1%の投信で検証してみよう。投信に集まったお金をすべて合計して、その日の金額で表示したものを「純資産総額」というが、この純資産総額が1万円で、基準価額が1年間変わらなかったとしたら(ありえないことだが)?

 販売会社に年3.74円、運用会社に年3.74円、信託銀行に年2.2円。その取り分はざっと2対2対1だ。

 もう少しリアルに、同じく信託報酬0.1%で純資産総額3000億円の投信なら? ざっくりとした計算だが、販売会社に年1億200万円、運用会社に年9900万円、信託銀行に年6000万円となる。

※純資産総額が大きくなるほど、段階的に信託報酬が下がる(=運用会社の取り分が減る)方式を採用しているケースが多いため、前述の「純資産総額1万円」のように販売会社と運用会社の取り分が同額にならない 

 純資産総額3000億円で、年間1億円前後……つまり投資家の資金がしっかり集まれば、たとえ投信を薄利多売してもそれなりに利益が出ることがわかる。逆にコストが安いのに純資産総額が数十億円などの投信は、収益的には楽にならない。 

(取材・文/安住拓哉、編集部・中島晶子、伊藤忍)

※アエラ増刊『AERA Money 2021春号』より抜粋

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