日曜日だったので、子どもたちも連れて、翌日の配達・設置をしてくれることで有名なチェーンの電器店に向かいました。店に入ったときはすでに夕方になっています。
早速、店員を見つけて、こう言いました。
私「家のディッシュ・ウォッシャーが壊れて、新しいのを買わなくてはいけないんだけど、どれがいいかな」
店員「このディッシュ・ウォッシャーがお勧めですよ」
私「値札に800ドルとありますが、少しは値引いてくれるのですか?」
店員「値引きはしません」
私「少しくらい安くしてくださいよ」
店員「値札通りです」
これでやりとりは終わってしまったのです。
通常、アメリカの大型電器店は、大して値引きをしてくれません。しかし交渉次第で少しは値引きさせることが可能だと聞いていました。
ならば、なぜうまくいかなかったのでしょう?
あとで振り返って気が付きました。私は店員に、提供すべきでない情報を与えてしまったのです。
まず、家のディッシュ・ウォッシャーが壊れたことは伝えないほうがよかったでしょう。
また、子どもたちは連れて行かないほうがよかったと思います。店に着いたのは日曜日の夕方、閉店の1時間前。ニューヨークでは、日曜日はほとんどの店が午後6時に店を閉めるのです。店員からすると、「この客は、もう今からは、他の電器店にディッシュ・ウォッシャーを見に行けないだろう。それに、明日は仕事があって買い物に行けないかもしれない」「この家には、子どもが少なくとも3人いる。だとしたらディッシュ・ウォッシャーは必需品だ。一日も早く、買いたいに違いない」などと思ったでしょう。この時点で私たちが、閉店前にディッシュ・ウォッシャーをどうしても買わなくてはいけないことを、伝えてしまっていたのです。
もし子どもを連れて行かずに、午前中に同じ大型電器店に行き、「お勧めのディッシュ・ウォッシャーはどれですか?」と尋ねていたら、どうなっていたでしょう?
多少なりとも値引きに成功したかもしれません。交渉では、相手を利する情報を与えてはいけないのです。このときのディッシュ・ウォッシャーの購入は、よい教訓になりました。