うつ病を克服し、偏差値29から東大に合格した杉山奈津子さんも、今や小学生の男の子の母。日々子育てに奮闘する中で見えてきた“なっちゃん流教育論”をお届けします。
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歴史が得意な人たちに、「どんな勉強をしているの?」という質問をぶつけると、たいてい、二つの答えが返ってきます。
一つ目は「山川の教科書を完璧にすること」。書店の参考書売り場にまで並んでいるほど、有名な教科書です。
そして二つ目に挙げられるのは、「歴史の漫画を読むこと」。
■歴史の漫画を読むと、人間関係がわかって、出来事が頭に入りやすくなる
歴史は暗記モノとはいいますが、漫画を読むと、「この事件が起こるにあたり、どういう人間関係のもつれや背景があったのか?」という問いに、ちゃんと血の通った理由があったのだと分かりやすくなります。
例えば、反乱者側が勝利したという日本では例を見ない内乱とされる「壬申の乱」では、中大兄皇子(天智天皇)の弟である大海人皇子(天武天皇)と、息子である大友皇子が、天皇の地位を巡って戦いました。
そこには、大友皇子の母親の地位が高くなかったという事実、それにもかかわらず中大兄皇子が自分の子どもを後継者にしようとした気持ち、その行動に不満をもった人たちの、感情の動きが見えてきます。
そして、中大兄皇子が大海人皇子の妻だった額田王をめとったり、後継者争いの前に大海人皇子が中大兄皇子に出家を申し出たりと、登場人物たちの立場や気持ち、勇気や駆け引きが分かり、人間の人生が複雑に絡み合って紡がれた出来事として頭に入ります。
つまり、教科書を読むだけでは単なる四つの文字でしかない「壬申の乱」が、ぐっと人間らしいストーリーに感じられ、身近なものになってくれるのです。
さて、そんな歴史上の人物の人生、さらに言えば人物の精神的な部分にまで踏み込むために、私は、漫画に加えて、伝記を読むこともお勧めしています。
もちろん、勉強のために偉人一人ひとりのストーリーを読んでいたら時間が足りないわけですが……。私が伝記を読むことをお勧めする理由は、座学の歴史の勉強のためというより、「ある人物がどのような困難にあい、それをどのように捉え、乗り越えたか」という心の持ちよう、つまりは「マインドセット」を学べるという点にあります。