1980年代後半から早稲田大や慶應義塾大などに従来とは違う学部が相次いで誕生した。各界で活躍する卒業生に学部を選んだ理由や人生に与えた影響を語ってもらった。AERA 2021年5月17日号の記事から。
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■ヒロド歩美さん(29)朝日放送テレビアナウンサー
早稲田大 国際教養学部
2010年に早稲田大国際教養学部に入学しました。英語一本のAO入試です。04年に設置されたばかりの学部でしたが、選んだ一番大きな理由は「最低でも1年、海外留学できること」。学部がオーストラリアのメルボルン大と留学提携していることを知り、そこからはもう第1志望は揺るがず、でした。
父が日系オーストラリア人で、仕事の関係で私もメルボルンに住んでいたこともあり、留学できなければ受験してでも学びたいと決めていたのがメルボルン大だったんです。2年生のとき、迷わず1年間留学しました。
留学と同じくらい、大学生活で大きかったのがゼミ。「恋愛学」でも有名な森川友義先生のゼミに入りました。各国のリーダー育成のため、日本のガバナンスについて学ぶ内容でしたが、とにかく厳しかった。私にとっては理不尽なことで怒られたりもしましたが(笑)、社会人になればそんなことは日常茶飯事。「厳しい社会人生活をどう乗り越えるか」を教えていただいたことが、いまの自分を形成した、とさえ感じています。
他の授業も「教養」の名のとおり、幅広く学べました。私はどちらかというと一つのことを突き詰めるよりも広く浅く知りたいタイプ。私自身が在学中にメディアにも興味を持っていったように、大学生は周りからいろんな刺激を受けて「やりたいこと」が変わっていくもの。そんなときに「将来を方向転換しやすい学部」でした。やりたいことが定まっていない高校生にもぴったりな学部だと思います。
もう一つ得た大きな財産は友人です。海外経験のある学生が半数、「純ジャパ(純粋ジャパニーズ)」と呼んでいた海外経験のない学生が半数でしたが、特に前者は怖いもの知らずの濃いキャラばかり。濃すぎて学部の友人だけでおなかいっぱい、おのずと他学部の人との出会いはない、という感じでした。「伝統なくともインパクトのある学部」、そして濃いキャラにもまれて過ごすことで「サバイバル能力が培われる学部」。それが国際教養学部でした。
この夏、2年ぶりに復活する「熱闘甲子園」で古田敦也さんとともにキャスターを務めます。ハードなスケジュールを乗りきって泥臭く頑張れるのも、コロナ禍で昨年、甲子園に行けなかった球児たちに手紙を書いたり「自分から何かを起こそう」と思えたりしたのも、原動力は国際教養学部のときに培ったものだと思っています。
(編集部・小長光哲郎)
※AERA 2021年5月17日号