東御市の準高地合宿を終えた後、5月に二つの大会に出てレース感覚を磨き、6月のジャパンオープンである程度、泳ぎを整えていきます。そこから本格的にレースの練習に切り替えていこうと思っています。
4月25日には東京、京都、大阪、兵庫の4都府県で緊急事態宣言が発出されました。新型コロナウイルスの変異株による感染の広がりが報じられ、医療現場が対応に苦慮している様子が伝えられます。東京五輪の中止や延期を求める人が増えている世論調査の結果も出ています。これまで私が参加した五輪とはまったく違う環境で地元開催の五輪を迎えることになります。
子どものころから五輪にあこがれ、長い年月、努力を続けて代表の座を勝ち取った選手たちには、晴れの舞台で思い切り実力を発揮してもらいたい。1964年東京大会がそうだったようにスポーツへの関心が高まり、トップアスリートのレベルアップだけでなく、多くの人が日常にスポーツを取り入れて、より健康な生活を送るための契機としてもらいたい。
そういう五輪のプラス面の議論ができず、コロナ対策に終始している現状を厳しく受け止めています。
国や自治体が今取り組むべき課題はワクチン接種ではないでしょうか。緊急事態宣言で日々の暮らしに制限をかけるだけでなく、感染リスクを抑えるワクチン接種を広げる道筋を示してほしいと思います。
五輪まで2カ月半、競泳日本代表チームは最大限の努力を続けていきます。
(構成/本誌・堀井正明)
平井伯昌(ひらい・のりまさ)/競泳日本代表ヘッドコーチ、日本水泳連盟競泳委員長。1963年生まれ、東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。86年に東京スイミングセンター入社。2013年から東洋大学水泳部監督。同大学法学部教授。『バケる人に育てる──勝負できる人材をつくる50の法則』(朝日新聞出版)など著書多数
※週刊朝日 2021年5月21日号