指導した北島康介選手、萩野公介選手が、計五つの五輪金メダルを獲得している平井伯昌・競泳日本代表ヘッドコーチ。連載「金メダルへのコーチング」で選手を好成績へ導く、練習の裏側を明かす。第68回は、「GW」について。
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競泳の日本代表チームは4月の五輪代表選考会翌日からの第1次合宿を終えて、所属のチームに戻って練習を続けています。
私のチームは4月23日から5月13日まで3週間、長野県東御市の標高1750メートルの準高地にある「GMOアスリーツパーク湯の丸」で合宿を行っています。
五輪イヤーのゴールデンウィーク(GW)は、夏の五輪本番に向けた重要なトレーニング期間です。ゴルフにたとえると、グリーンを狙うアプローチショットでしょうか。できるだけピンに近づけるために正確なショットを打ちたい。
選考会でいい結果を出した選手はグリーンに近づいているわけで、これまでの練習を微調整する形で進めていいでしょう。選考会が芳しくなかった選手は、まだグリーンまで距離が残っている状況なので、ここで立て直す必要があります。
五輪3大会連続代表の萩野公介、前回リオ五輪は日本選手団唯一の中学生だった酒井夏海、そして初出場の青木玲緒樹(れおな)、大橋悠依、白井璃緒。私自身、反省すべき点があった選考会は選手も満足できる結果が出せなかったので、このGWはしっかり泳ぎ込んで、自分のキャパシティーを広げる練習に取り組みました。
スピードを強化する仕上げの練習のときに泳ぎが崩れないように、ここで固めておきたい。たとえば4月下旬には50メートルを75秒ごとに1回、計40回泳ぐインターバルトレーニングを入れました。4回続けてハードに泳ぎ、1回イージーの泳ぎを入れて、これを8セット繰り返します。ハードは全力ではなく、いい泳ぎで8割5分ぐらいの出来をずっと維持する。冬場の泳ぎ込みの時期にやるようなメニューですが、集中していい練習ができていました。