私は演者の討論の間、頭をぼんやりとさせながら、思いを“虚空”に遊ばせました。いずれ現世から旅立ち訪れることになる虚空。そこに心をもっていくと、すでにあちらの住人になっているかけがえのない人たちと言葉を交わすことになります。それによって心が静かになり、残りの人生をどう過ごすべきかといったことが、自然に頭に浮かんでくるのです。
自宅で退屈になったら、畳の上に寝転んで呼吸法を試してみてください。白隠禅師が編み出した「内観の法」です。
(1)仰向けで大の字になり、目をつむって、全身の力を抜く(2)鼻からゆっくり息を吸いながら、おなかをへこませる(3)十分に吸ったら、鼻から静かに息を吐く。おなかは膨らませる(4)これを3回ほど繰り返し、心が静まったら、自分の心の中を見つめる。
これにより退屈が転じて、養生を深める貴重な時間になります。
帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中
※週刊朝日 2021年5月28日号