更年期世代の女性であれば、誰もが経験する可能性がある更年期障害。症状の程度は人によって大きな差があるが、約8割が経験すると言われる。訴える症状はさまざまで、ほかの病気との見極めが大切だ。
【データ】更年期障害にかかりやすい年代は?主な症状は?こちら
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日本人女性の平均的な閉経年齢は約50歳。更年期とは、閉経前の5年間と閉経後の5年間を合わせた10年間を指す。この時期に表れるさまざまな症状の中で、ほかの病気が原因ではないものを「更年期症状」といい、その中でも症状が重く、日常生活に支障をきたす状態を「更年期障害」という。
更年期障害の最も大きな原因は、女性ホルモンの一つであるエストロゲンが、閉経前後に大きくゆらぎながら低下していくことだ。
卵巣から分泌されるエストロゲンの分泌量は、年代によって変化していく。思春期から分泌量が増えていき、20~30代でピークを迎える。40代半ばから急激に減少していき、60代以降はほとんど分泌されなくなる。
更年期を迎えると、どの女性も卵巣機能が低下し、エストロゲンの分泌量が減少するが、誰もが更年期障害を発症するわけではない。エストロゲンのゆらぎや減少に順応し、症状をまったく感じない人もいれば、日常生活を送るのが困難なほど症状が重い人もいる。その差はどこにあるのか。野崎ウイメンズクリニック院長の野崎雅裕医師はこう話す。
「エストロゲン分泌量の減少に、子どもの受験や自立、親の介護など家族の問題、仕事のストレスといった環境的要因、さらに几帳面で心配性といった性格が加わることで、更年期障害を発症しやすくなります」
■卵巣機能の低下で脳が興奮状態に
更年期障害の症状は、(1)血管運動神経症状(2)そのほかの身体症状(3)精神症状の三つに分けられる。最も典型的な症状がほてり・のぼせ(ホットフラッシュ)、発汗などの血管運動神経症状だ。更年期になると、なぜこのような症状が出やすくなるのか。
女性ホルモンの分泌は自律神経系の調整もおこなう脳の視床下部やその下にある脳下垂体が司っている。視床下部や脳下垂体からの指令によって、卵巣は、エストロゲンを分泌する。