患者さんと周りの人たちは、それぞれに“生命のエネルギー”を持っています。そのエネルギーはお互いが関わり合うことで、高め合ったり、逆に消耗したりするのです。

 患者さんにとって病院は、生命のエネルギーを高める場でなければいけません。そのためには、お互いの関わりが、エネルギーを高める方向に向かっていなければいけないのです。とくに患者さんと医療者との関わりは重要になってきます。

 その病院がエネルギーを高める方向に向かっているのか、そうでないのかは、一歩足を踏み入れればわかります。

 私の場合は医師としての直観が働くところもあるのですが、一般の人でも、それは感じ取れると思うのです。誰かの家にお邪魔して「ああ温かい雰囲気の家だな」と思うことがあるじゃないですか。ロビーに書かれた文字、装飾、インテリアの感じ、受付にいるスタッフの表情がそれを語りかけてきます。

 キーワードは「やさしさ」と「居心地のよさ」。病院に入ったら、まずロビーのソファにゆったり座って、やさしさを感じられるかどうか、居心地がいいかどうかをしっかり吟味してください。

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

週刊朝日  2021年6月11日号

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