また、大会が開催されれば、応援イベントなどで人が集まる機会が増えるのも避けられない。

 仲田氏らの別の試算では、大会期間中に人の流れが1%増えれば、感染者が180人程度増える可能性があるという。

「試算によると、感染者数の増加に与える影響は、五輪関係者よりも日本国内に住んでいる人たちの人流増加のほうが大きい。大会期間中にどうやって人の流れを抑えるか。それを考えることが重要です」(仲田氏)

 大会開催によるリスクは日本国内にとどまらない。複数の変異株が日本に集まれば、新たに“五輪株”が発生する危険性もある。尾身氏も3日の国会答弁で「(ウイルスが)医療制度や検査体制が非常に脆弱(ぜいじゃく)な発展途上国にわたる可能性がある」と指摘している。

 東京医科大学病院渡航者医療センターの濱田篤郎特任教授が指摘する。

「多くの選手やコーチは選手村に宿泊するので、行動制限は可能でしょう。問題は、街のホテルに宿泊する報道関係者や大会関係者です。監視や行動制限が困難になることが予想されます」

 大会に参加する選手や関係者の行動ルールをまとめた「プレーブック」では、報道関係者らにも商業施設やレストランに行かないことなどが求められているが、全員がルールを守るとは限らない。また、入国時は日本で繰り返しPCR検査を受けても、帰国後に日本と同様の検査や隔離が実施されるかは不明だ。

「大会開催の条件は、日本国内で流行を起こさないこと、医療機関に負担をかけないことだけではありません。大会関係者から世界に流行を広げないことも重要です」(濱田特任教授)

 仮に五輪を切り抜けたとしても、本当の危機はその後にやって来るかもしれない。ある大会関係者は言う。

「五輪期間中に人の流れが増えれば、ウイルスの潜伏期間が過ぎた1~2週間後から感染者の増加が始まる。五輪閉幕の16日後に開幕するパラリンピックに“第5波”が直撃する可能性がある」

 パラリンピックには、五輪にはないリスクもある。日本パラリンピック委員会の幹部は言う。

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