一方、日本には、半導体や電池用の製造装置、部品、材料などで優秀な企業が多い。日韓が組めば、DX(デジタル・トランスフォーメーション)やグリーン革命を進める上で、強力なパートナーになれる。

 もちろん、日韓の間には、竹島、慰安婦、徴用工など問題が山積し、解決は容易でない。しかし、最近の徴用工訴訟では、日本企業に賠償を命じた大法院(最高裁)の判決とは異なる判断を示して原告の訴えが退けられた。これは、韓国側から関係改善を求めるシグナルだと見ることもできる。

 冷え切った両国関係を放置して得をするのは、中国や北朝鮮だけだ。菅義偉総理は、日本が大国だから韓国ごときに譲歩する必要はないと思いたいのだろうが、現実はかなり異なる。日本の産業はデジタル化でもグリーン化でも世界に後れをとり、もはや偉そうなことを言える時代は終わっている。頑なに対話を拒否しても、むしろ余裕がないことの証だと言われるだけだ。菅総理は、日本の未来に責任を負うリーダーとして、大局を見失わず、無条件でムン大統領との対話を早急に実現するべきだ。

週刊朝日  2021年7月2日号

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『官邸の暴走』(角川新書)など