シワやシミなどの治療であれば、金額的にも技術的にも、一般庶民にとって身近なものになってきているという。

「患者さんの払える金額で継続的にできる。そして、何をやったかわからないけれど、なんとなくキレイを保っている、というのが一番好まれる治療です」

 と山下さん。無理のない範囲内で、理想はさりげなく、という考えだ。

 どの治療にも当然リスクはあるが、以前ほど勇気と覚悟とお金がいるわけではないようだ。

 ところで、シワやたるみ、シミなどのそもそもの原因は何なのか。紫外線の影響や乾燥といった要因はあるが、最も大きいのは皮膚や皮下組織、筋肉などの老化のようだ。

 東海大学医学部外科学系形成外科学教授の河野太郎さんによると、体と同じように顔の骨ももろくなり、いわゆる骨粗鬆(こつそしょう)症のように減っていく。目の周りの骨が大きく沈めば、目はくぼむ。あごが先細ればほおはたるむ。張っていた筋肉が縮まればシワも生まれる。それらを防ぐには、骨・筋肉・脂肪・皮膚などの老化を食い止めるケアが必要というわけだ。

 では、具体的にどんな施術があるのか。まずはシワやたるみの治療から見ていこう。

 アンチエイジング専門の形成外科・美容外科の「クリニック宇津木流」院長の宇津木龍一さんは、シワができる原因として、「シワのできる表情の繰り返しと表情筋の拘縮」と説明する。険しい表情をすると眉間(みけん)や額に、笑うときは目尻にシワができやすくなる。

 昔は、こうしたシワへの施術では、ただ引っ張って目がつってキツネのような顔になったり、若いときとは別人のようになったりすることが多かったという。

 現在、こうした表情ジワに効果的なのはボトックスだ。ボツリヌス製剤(天然のたんぱく質)を注射することによって、筋肉の働きを緩める効果がある。たとえば額の筋肉(前頭筋)の力を弱めて、シワを浅くする。

「効果は5~7日で表れ、2~4カ月ぐらいは継続します。ただ、注意も必要です。前頭筋を弱めるほどシワはなくなりますが、緩みすぎると眉が下がってしまうので、目が開きにくくなったり、人相が変わったりするケースもあります。こうしたメカニズムを熟知した医師に相談しないと、後で困ることもあります」(宇津木さん)

(本誌・大崎百紀、矢崎慶一)

週刊朝日  2021年7月2日号より抜粋

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