「一度離職して当社に再就職する方の多くは、将来のビジョンをしっかりと考え、ある程度目標が固まった状態で入社します。さらに、ビハインドがある分、同年齢の新卒組に負けないようにと努力する。目標を持って努力するので、成長スピードが速い人が多いと感じています」

 それ以外にも、第二新卒は「新卒と違い、即日入社可能なケースも多くスピード感がある」「内定者フォローが楽」「基礎的なビジネスマナーを身につけており、新卒ほど教育コストがかからない」「一度離職を経験しているため危機感があり、定着率が高い」「比較対象があるので我慢強い」などのメリットがあると説明される。


 とはいえ、テクノプロ・デザイン社も第二新卒だからといって、もろ手を挙げて歓迎はしていない。齋田さんはこう話す。

「短期離職は、やはり“失敗”で“マイナス”です。だから、面接では『後悔していますか』と必ず聞きます。失敗は誰にでもあるけれど、そこから何を学んで前に進んでいるかを重視します。短期離職は本人にとって大きな負荷で、成長するきっかけにもなる。うまく生かしていけそうな人は採用したいなと思うし、実際に活躍しています」

■失敗を糧に成功つかむ

 フリーのデジタルマーケターとして昨年独立した東京都の男性(32)は、最初の就職の「失敗」を生かし、第二新卒で成功をつかんだ一人だ。男性は大学卒業後、大手企業にシステムエンジニア(SE)として入社したが、1年で辞めた。

「最初の就職の時は、はっきり言って、何も考えていませんでした。大手企業に行ければいいな、これからの時代はITだろ、ということで就職したんです」

 本人は今振り返るとあきれるばかりだと言うが、大学生が考える志望理由としては珍しくはない。ただ、入社後の研修で仕事の一端を体験したとき、「向いていない」と悟ったという。

「どんな仕事をするのかさえ、入社するまでよくわかっていなかったんです。文字通りの“失敗”でした」(男性)

 会社を辞めた後は、ブログのアフィリエイト(成功報酬型広告)やイベント運営など小さなビジネスを個人で手掛け、「最もやりがいを感じた」デジタルマーケティングを仕事にしようと再度就職活動に挑んだ。

 転職先のベンチャー企業には6年勤務し、部下20人を抱えるマーケティングチームの部長まで務めた。独立した今は、部長職時代もはるかにしのぐ年収を得ている。最初の就職は経歴の「傷」にも見えるが、無駄ではなかったと振り返る。

「当時は特にやりたいこともなく、なんとなく仕事を選んでしまいました。ただ、その失敗があったからこそ、再就職の時は何が自分に向いているのか、何をやりたいのかを明確にして就職活動に臨むことができました」(同)

 失敗を乗り越えた第二新卒は強い。先の川畑さんは言う。

「新卒でも第二新卒でも、優秀な人もそうでない人もいます。やはり、結局は『個人』なんです。ただ、失敗からリカバリーできる人は優秀だし、第二新卒のなかにそんな人が大勢いるのは間違いない。1社辞めたことに目くじらを立てる必要はないし、失敗したこと自体がダメだという理論は時代遅れです。いまは『新卒』『第二新卒』という言葉で分断されていますが、例えば『25歳以下の若手枠』のような募集が今後はもっと広まっていくはずです」

(編集部・川口穣)

AERA 2021年6月28日号

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