小学生の鞄といえばランドセル、というイメージが強い日本。しかし実際に使用するなかで違和感を覚える親子もいる。ランドセルに代わる商品も複数あるが、いまいち定着しないのはなぜなのか。AERA 2021年6月28日号で取材した。
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実はランドセルに代わる小学生向けの鞄も複数開発されている。革や合皮でなくナイロンやポリエステルといった化学素材でできた、軽くて比較的安価な商品だ。有名なのは「ランリック」と「ナップランド」。どちらも昭和40年代に誕生し、京都府や北海道小樽市の一部で小学生の通学鞄として定着している。
ここ数年でも、さまざまな商品が登場した。浜松市に住む和久田麻衣さんは5年前、友人と「ことゆくraccu」の開発に着手した。自身の子どもが小学校に入学して3日で「ランドセルが重くて肩が痛い」と訴えたことや、入りきらない荷物があったこと、不便を感じたことなどがきっかけだった。
「ランドセルは外にポケットがないので転んだとき絆創膏を出せなかった、と子どもが話すのを聞いて『おかしなものを背負わせているな』と。毎日使うからこそ、もっと機能性が必要だと感じました」(和久田さん)
実際に商品を作って販売を始めると、全国から多くの共感の声が寄せられた。ランドセルが重くて学校に行きたくないと泣く子の話。学校が遠いのに荷物が重すぎて、途中休み休み帰ってくる子の話。肩こりや腰痛に悩まされる子どもや、背骨が湾曲してランドセルを背負えない子どもの話も聞いた。毎年、新学期が始まって1週間たった頃から問い合わせが増えるという。
「文部科学省が18年に、置き勉を認めるよう事務連絡を出しましたが、実際に置き勉が進んだのは一部の学校だけです。うちの近くでも置き勉が進んでいる小学校はほとんどありませんし、今年はタブレットも加わってさらに荷物が重くなっている。全国的にも同様のところは多いようです」(和久田さん)
■普及には「慣習の壁」
ただ一方では「みんなと違うもの」をもたせることに不安を抱く保護者の声も、よく聞くという。