チャット相談「あなたのいばしょ」に実際に寄せられた10代の悩みの声。「死にたいって言う言葉でしか表現できない」などの言葉に切迫感がある(撮影/小黒冴夏)
チャット相談「あなたのいばしょ」に実際に寄せられた10代の悩みの声。「死にたいって言う言葉でしか表現できない」などの言葉に切迫感がある(撮影/小黒冴夏)
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「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星さん。「望まない孤独」対策を政府に直談判し、2月に「孤独・孤立対策担当室」が新設された(撮影/小黒冴夏)
「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星さん。「望まない孤独」対策を政府に直談判し、2月に「孤独・孤立対策担当室」が新設された(撮影/小黒冴夏)

 チャット相談「あなたのいばしょ」には日々、小・中学生から「死にたい」「消えたい」という悲痛な声が寄せられている。子どもたちが追い詰められる背景には、何があるのか。AERA 2021年7月5日号から。

【写真】「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星さん

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 ある中学生は、小学高学年の頃からリストカットをしていた。

 中学生から受けたチャット相談の後半にそれがわかったと、ボランティア相談員の高山奈々子さん(41)は振り返った。チャットとは、ネット上での文字入力による会話のことだ。

「学校に行けてないから外には出たくないけど、家に一人でいても苦しい」

 無料チャット相談サイト「あなたのいばしょ」に、中学生がそう書き込んできて、高山さんが対応した。

「私立の中高一貫校に通っていて、今年6月の長期休校明け頃から登校できなくなったようです。対人関係が苦手で、人が大勢いる場所に行くのもつらい。学校再開当初は憧れの学校だからと頑張って通っていたが、やはり続かなかった、と。リストカットも再開したようです」(高山さん)

 教室でいじめられていたわけでもなく、趣味などの話が合うグループにも入っていたという。

「でも、その子は『グループに自分はいないほうがいい』と書いてきました。『私抜きでもみんな楽しそうだし、周りをなごませるような気の利いた冗談が言えない私のせいだ』と」(高山さん)

 中学生なりの「自己責任」論だ。

 2020年3月に開設された「あなたのいばしょ」は、24時間365日誰でも利用が可能。開設から1年あまりを経て、いまでは10~20代を中心に毎日平均600件の相談が寄せられる。

 特に若年層は電話より、普段から使い慣れたチャットのほうが悩み相談をする際の抵抗感が少ないと言われる。

■人生で初めて他人から肯定してもらえた

 同サイトの相談員はボランティアで、研修中の人も含めると、国内外の日本人約700人が務める。相談者との対話は、「受容・共感・肯定・承認」の過程をたどる傾聴だ。

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