■人々の「望まない孤独」にチャット相談で向き合う

 慶應義塾大学4年で、「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星(こうき)さん(22)は、10代相談者に共通の傾向を指摘する。

「背景には親の過干渉があり、子どもたちは親の期待に無言のプレッシャーを常に感じています。でも、そのストレスを吐き出して、親を落胆させたくもない。だけど苦しいから、『死にたい』と書いてくる子が多い。死ぬと、親や先生に迷惑がかかるからこの場から『消えたい』『いなくなりたい』という子もいます。とてもやさしい気持ちの子たちが多いんです」

 そんな小・中学生が死にたくなる現実がある。大空さんは事態の深刻さを指摘する。

「子どもたちの親の多くが、『子どものことは自分が一番よくわかっている』と過信していること。だから『勉強する気になれない』とか、朝起きてこられないことなど、子どもが無意識に出しているサインにも気づけない。逆に、叱りつけていたりするわけです」

 昨年から続くコロナ禍で外出の機会が制限され、「死にたい」と感じる子たちの切迫度はさらに高まっている。

 2020年の児童生徒の自殺者数は前年比約4割増の479人(厚生労働省発表)。男子高生が最多191人で、小学生14人(前年比8人増)、中学生136人(同40人増)だ。

 大空さん自身、小学校時代に両親が離婚。父親との生活になじめず、母親と暮らすも口論が絶えず、自傷行為を繰り返した。「死にたい」と思うほど苦しんだ時期がある。かつての自分のように心身ともに追いつめられている人たちを「望まない孤独」と呼び、そういう人たちがいることが耐えられないと、チャット相談サイトを開設した。(ルポライター・荒川龍)

AERA 2021年7月5日号より抜粋

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