「まずは相談者の話を全部受けとめる『受容』が大切です。苦しい気持ちに『共感』したり、悩むことを『肯定』したりもします。対話を通して相手を『承認』するという流れです。相談は1回40分が目安で、私は2時間を超えることもあります」(高山さん)

 相談員の意見を押しつけたり、相手の考え方を否定したりするのは禁止されている。

「本当の気持ちを吐き出してもらいながら、場合によって相手と異なる視点も伝えます。結果、『そんな考え方もあるのか』と気づいてもらい、心理的視野狭窄(きょうさく)になりがちな状況を緩和できることもあります」(同)

 前出の中学生の場合、「せっかく合格した学校になじめていない自分がおかしい」という自責感情をとらえ、高山さんが「学校でも会社でも、実際に入ってみたら想像していたのと違うと感じ、なじめないと思うことは誰にでもあるはずですよ」と返すと、中学生は「えっ、そうなんですか?」と反応したという。

 そこから相談者の言葉数が増え、高山さんとの距離感が一気に縮まった。その後、小学高学年で初めてリストカットをしたり、一時不登校だったりしたことなどが次々と明かされた。

「10代に限らず、リストカットがわかった場合、私たちは『やめなさい』とは言いません。本人の逃げ場を取り上げることになる危険性があります。生命の危機を感じれば専門家に支援を求めます。が、基本は『他にストレスを発散する方法があればいいですね』などと、できる限り相手を刺激しない伝え方を心がけています」(高山さん)

 中学生とのチャットは2時間に及んだ。後半は、クラスの友達にも言ったことがない夢まで教えてくれたという。

「チャットを通じて信頼関係が生まれ、『人生で初めて他人から肯定してもらえた気がします』などと、感謝を伝えてくれる子たちもいます」(高山さん)

 それは裏を返せば、子どもたちが家庭や学校ではダメ出しばかりされ続けてきたということだ。

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