藤井聡太棋聖(18)が、棋聖戦五番勝負で渡辺明名人(37)に2連勝した。初防衛に王手をかけた形だが、この後、藤井棋聖には王位戦七番勝負も待っている。ダブルタイトル戦というタフなスケジュールを乗り越えた先には、「藤井時代」の到来も見えてくる。AERA 2021年7月5日号では、十七世名人資格者の谷川浩司九段(59)に、藤井棋聖の今後の展望などを聞いた。
【写真】藤井聡太七段は「一人だけ小数点第2位まで見えている」と語った棋士は?
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29日には藤井王位に豊島将之竜王(31)が挑戦する王位戦七番勝負が開幕。藤井は「ダブルタイトル戦」に臨むことになる。以下は棋聖戦開幕前にインタビューした際の谷川の言葉だ。
「初防衛を目指す側は重圧がかかります。過去の成績を見ても初防衛戦で番勝負を制する確率は3割ぐらいだそうです。しかし藤井さんは重圧など感じず、これまでどおり自然体で臨むでしょう。挑戦者のほうが本来気持ちは楽なはず。とはいえ今回は年上の渡辺さん、豊島さんのほうに重圧がかかるのではないでしょうか。将棋界全体の流れでいえば、これから『藤井時代』が訪れるのかどうかをうらなう二つのタイトル戦です。もし藤井さんが二つとも防衛すれば、それ以降はタイトルを増やす戦いになる。そうすると19歳、20歳で将棋界の第一人者になることもありえるでしょう」
■タイトル四つが必須
谷川が唱える第一人者の定義はかなりハードルが高い。
「(別格の)竜王か名人、どちらかを持った上で、タイトル四つは必要と考えます」
現在、将棋界のタイトルは全部で8。それが7の時代に谷川は四冠となり、厳しすぎる条件をクリアした。そして現在、渡辺もまた棋聖位を獲得すれば初の四冠となる。逆に「渡辺時代」が来る可能性もあるのか?
「そういうことになりますかね。ただ、ある程度は長く続けなければいけない。私の四冠は半年ほどの短いものでした。渡辺さんは30代後半に差しかかっているので、本人もタイトル四つ取って一安心はできないと思います。一方で(まだ18歳と若い)藤井さんが四つ取れば、けっこう続くのかなと思います」
もし藤井が今年度、竜王挑戦、獲得を果たせば、本格的な藤井時代の到来といえそうだ。
一方で藤井が最短で名人になれるのは2年後。制度上、順位戦でB級1組、A級と駆け上がる必要がある。谷川は史上最年少の21歳で名人となった。その記録更新を言及されることについては、どんな心境だろうか。