「『そんな書き方をしていたらまた先生に×にされるよ!』とマイナスな言葉を投げかける親御さんがいますが、これではやる気は生まれません。子どもをその気にさせるには、前向きな言葉かけで励ますことを心がけてほしいです」(同)

 テストで点数を取るためには、授業をしっかりと聞くというのは大前提だと分かっていても、低学年ではこの点もなかなか難しい。だが、低学年特有の純粋さを上手に使えば、子ども自ら率先して授業を聞けるようになるようだ。

「まずは、小学校の先生がものすごく教えるのが上手で、とっても丁寧に教えてくれているということをお子さんに伝えます。その上で、どのくらい丁寧に教えてくれたのか、帰ったらママやパパにも教えてね、と提案してみてください」(同)

■先生のまねで覚える

 福岡県在住の小学生男児は、母親とこうした会話を交わしたのをきっかけに、驚くほどよく先生の話を聞くようになった。ある日、自宅に帰ると、先生が黒板に書いた平仮名の「い」の字について、担任の教えてくれた書き方を目を輝かせて母親に伝えてきた。

 漢字練習用のノートの1マスには十字が入って4分割されているが、その四つの部屋の左上、真ん中あたりから書き始めたことや、左下の枠でしっかりはねてから今度は右側の上の枠の「このあたりから書き始めるんだよ」など──。先生がどのように教えているかを細かく観察、自宅で母親に伝えるようになり始めた。中山さんは言う。

「こうなると、先生がどこが大事だと話していたかもしっかりと頭に入るようになります。これは幼児教育でも使うミラーリングの指導法ともつながるのですが、指導者のまねをすることで覚えるという手法です。授業中の先生の話がしっかりと聞けるようになれば、テストでも点数が取れるようになるはずです」(同)

 先生の指導をじっくり観察するこの学習法は他教科でも役に立つ。親に話すことで復習にも繋がる。

 疲れていると親はついつい、文句や小言ばかりが口から出るが、教師が与える×印よりも、親が発する言葉のほうがやる気を萎えさせていることを自覚した方がよさそうだ。(フリーランス記者・宮本さおり)

AERA 2021年7月5日号