■人間を「鬼化」から救うことができるのは誰なのか?

 その後、最終決戦で、鬼の総領・鬼舞辻無惨(きぶつじ・むざん)と鬼殺隊との総力戦に突入する。無惨に日輪刀を突き刺した炭治郎であったが、無惨の出した衝撃波によって左腕がもげてしまう。片手では力を込めきれない炭治郎を、戦闘で片腕になった義勇が支えた。2人の力が混ざり合い、日輪刀が「赫(あか)く」染まる。

 この赫刀(かくとう)と日光の力で、無惨の肉体は崩れ落ちた。しかし、鬼殺隊の皆が勝利を喜んだのも、つかの間のことで、死力を尽くした者たちの命の炎が、次々と消えていった。炭治郎もその1人だった。義勇は自分も相当の深手を負いながら、炭治郎の姿を探し求めたが、呼吸が止まった炭治郎を見つけて泣き崩れる。

<また守れなかった 俺は人に守られてばかりだ… 許してくれ>(冨岡義勇/23巻・第200話「勝利の代償」)

 しかし、悲劇はさらに続く。死亡した炭治郎の肉体を、無惨が「鬼化」したのだ。炭治郎は「鬼」として復活し、周囲の者たちに攻撃する。その瞬間、義勇は誰よりも素早く反応し、周囲の者たちを守った。無惨成敗後も、義勇は刀を握りしめたままだったのだ。

■義勇の思い、炭治郎の願い

<炭治郎が鬼にされた 太陽の下に固定して焼き殺す 人を殺す前に炭治郎を殺せ!!>(冨岡義勇/23巻・第201話「鬼の王」)

 涙を流しながら義勇は、守るべきはずの炭治郎と戦うことになる。生前、炭治郎は「誰かが道を踏み外しそうになったら皆で止めような」と、仲間たちと話し合っていた。仲間思いの炭治郎が、仲間を傷つけること、仲間を殺すことなどあってはならない。炭治郎の願いは人のまま死ぬこと。それでも、誰も炭治郎を殺せない。伊之助も。善逸も。炭治郎が好きだから。誰も炭治郎を殺せなかった。

 そんな中で、義勇だけが、「炭治郎を殺す」覚悟を決める。炭治郎の願いを守ることが、義勇にとって、炭治郎を守ることだった。誰よりも重い決断を義勇は下した。義勇は炭治郎にむかって“鬼滅の刃”を振るう。

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かつての笑顔が戻った義勇