後半開始から三笘薫、堂安律を同時投入。前半より高い位置でボールを奪うことで、スペインのリズムが微妙に狂っていく。後半3分に堂安が左足でキーパーの手をはじき飛ばす同点弾をたたき込み、試合の流れを変えた。さらに後半6分、三笘が左サイドのゴールライン際ギリギリで折り返すと、ペナルティーエリア内に駆け上がった田中碧が体ごと押し込む。ボールがゴールラインを割ったか確認のため、ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)チェックが行われたが、ゴールが認められて2‐1と逆転に成功した。
この時点で試合時間はアディショナルタイムを含めて、まだ40分以上残っていた。ここで森保監督が強気に動いた。後半24分に鎌田大地に代え、冨安を右のウィングバックに配置する。この采配はリスクがあった。
「前半だけで板倉、谷口、吉田のセンターバック3人がイエローカードを受けている。時間の経過と共にスペインの攻撃の強度が高まることを考えると、3人は退場のリスクを抱えていた。冨安はセンターバックと交代するのが定石ですが、森保監督はそれでは逃げ切れないと判断したのでしょう。スペインが切り札のアンス・ファティを途中交代でつぎ込むと、すぐに冨安を入れてファティを封じ込めた。守備でも大きく貢献した三笘、1トップの浅野拓磨、試合終盤の遠藤をボランチで途中交代のタイミングも完璧で、5枚の交代枠がすべてうまくハマった」(前出のスポーツ紙記者)
ドイツに続き、スペインを撃破したことで、森保監督の評価が高まっている。スポーツ紙デスクは「W杯前は森保監督はこの大会限りで退任してほしいという声が圧倒的に多かったが、この3試合で評価がガラッと変わった。決勝トーナメント1回戦で、クロアチアに勝って史上初のベスト8進出を達成したら、続投も現実的な選択肢になると思います」と語る。
そして、この男にも「代表監督待望論」が高まっている。元日本代表の本田圭佑だ。このW杯にABEMAで解説者デビューを果たすと、ヨーロッパのトップクラブでプレーしていた経験に基づく高度な分析を披露。サッカー初心者にもわかりやすい解説で、視聴者の心をつかんだ。日本代表を思う気持ちは強く、「ファールやん!」「(浅野)拓磨サイド行けっておまえ! サイド行けって!」と語気を強めることも。言葉選びで忖度しないため、感情移入できる。コスタリカ戦に敗れた際は重苦しい雰囲気が流れた中、「勝手にガッカリしてるだけなんで。わかってたよと。元々こうだったよねというラインに一回落ち着かせて」と冷静な口調で語り、前向きな姿勢を忘れなかった。