豪快なスイングが印象的だった近田拓矢 (c)朝日新聞社
豪快なスイングが印象的だった近田拓矢 (c)朝日新聞社
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 現役プロ野球選手21人を輩出し、出身高校別ランキングで横浜とともにトップを誇る大阪桐蔭。

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 藤浪晋太郎、岩田稔(阪神)、森友哉、中村剛也、岡田雅利(西武)、浅村栄斗(楽天)、中田翔日本ハム)、平田良介、根尾昂(中日)、藤原恭大(ロッテ)らOBだけでチームを組めるほど、錚々たる顔ぶれが並んでいる。

 その一方で、プロ入りしなかったOBの中にも、高校野球ファンに強烈な印象を残した打者たちが多く存在する。

 まず1991年夏に初の全国制覇をはたした世代からは、沢村通と井上大の名前が挙がる。

 沢村は、チームが最も苦戦した3回戦の秋田戦で救世主になった。

 1対3の9回2死無走者、あと1人で敗戦という場面で、同点劇を呼び込む左中間への三塁打。さらに3対3の延長11回に決勝の右越えソロを放ち、奇跡の逆転勝利をもたらしたが、話はこれだけでは終わらなかった。

 この日の沢村は、2回に安打、7回に二塁打を記録していたことから、5打席目の決勝弾で史上3人目のサイクル安打が達成されたのだ。

「記録は全然知らなかったんです。塁に出ることだけを考えてました。(本塁打を打って)ベンチに帰ってから、冷静になって、やっとわかった」。

 苦しい試合をやっとの思いで勝ち上がった陰で、もうひとつの快挙が生まれていたと知り、喜びも倍増だったことだろう。

 沢村は決勝の沖縄水産戦でも4打数4安打6打点と大活躍し、4番・萩原誠(阪神-近鉄)の大会通算打率.688に次ぐ.591の高打率を残している。

 もう一人のV戦士・井上は、準々決勝の帝京戦で攻守にわたってヒーローになった。

 1点リードの6回、あわや同点本塁打という左翼ラッキーゾーンへの大飛球に対し、右足をネットにかけてスルスルとよじ登ると、上半身をラッキーゾーンに入れながらスーパーキャッチ。

「自分でもホームランかなと思いました。でも、金網に登ったときに、“捕れる!”と思ったんです。(自分でも)信じられないです」と本人も驚くばかりだった。

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中田翔から4番を引き継いだ男