2年の間にたまった不用品や夫が残していった物は、なんと2トントラック2台分。物を家から出すと心がスッとしました。私に一番必要だったのは、本当は自分ってどうしたいの?と、自問自答しながら整理する時間だった。「部屋は心の鏡」と言いますが、裏を返せば、部屋が整えば心も穏やかになるのです。片づけながら自問自答を繰り返すうちに「人生も子どもの学費も全部引き受けて生きいく」という覚悟が出来ました。
アラフィフのシングルマザーという逆境の中で、もともとの超・負けず嫌いな性格が現れました。「小さくて不器用だから」「お姉ちゃんと比べて…」「女に建築は無理」なんて呪いに抑えられてきたかつての「サッちゃん」が、「サッちゃんだってできるもん!!」と、うわぁー!って叫びながら暴れ出しました。
ヨガスタジオでは店長にまで上りつめました。起業する時は、「片づけなんかでうまくいくはずがない」といろんな人に言われました。言われるほど燃えました。
信じたのは、ヨガスタジオで相談してくれた女性たちの本音、専業主婦時代の孤独感、仕事と家事と子育て、すべてを背負ったときの閉塞感、問題を先送りにした後悔、片づけで自信を取り戻した経験まるごと。そして負けず嫌いの自分。
全ての苦い経験から、家庭力アッププロジェクトが生まれました。
いま、コロナ禍で全員の在宅時間が増え、女性の家事負担が増しています。私の負けず嫌い根性が「そんなのおかしい」って騒いでいます。
しかし、部屋が散らかるのを、家事をしない夫や子どものせいにしたところで、部屋は片づいてくれません。社会構造のせいにすれば気持ちがおさまるかもしれない。本当に残念ですが、そうであったとしても、家族は察してくれない。
じゃあ私はどうしたいの?と考えて、「いろいろあるよね。でも片づけたいのは私だし、まずは自分からやってみよう」と、愚痴も吐き出しつつチームで片づけるのが家庭力アッププロジェクトです。片づけを「やればできる」から「やっている」に変えることで、かつての私のように自信を無くした女性たちが輝き出します。
私は「片づけは最高のセルフコーチング」とお話しします。片づけを通して自ら答えを出し、やる習慣が身につけば、勉強にも仕事にも生かせる。片づけは人生をポジティブにするスキルなんだよ、と伝えたいのです。
誰もが自分のことは自分で片づけ、自分の食べる物くらい作れば、世の女性たちの負担は一気に減ります。全然そうなっていないから、私の出番が増えています。負けず嫌いでこの問題をなんとかしたい。
未来を担う子どもたちにも、片づけを通して自主自立をもっと伝えたい。そして誰もが片づけられるようになって、いつか私の仕事なんてなくなればいいって、本当に思うんですよ。
◯西崎彩智(にしざき・さち)/1967年生まれ。お片づけ習慣化コンサルタント、Homeport 代表取締役。片づけ・自分の人生・夫婦間のコミュニケーションを軸に、ママたちが自分らしくご機嫌な毎日を送るための「家庭力アッププロジェクト®」や、子どもたちが片づけを通して”生きる力”を養える「親子deお片づけ」を主宰。ラジオ大阪「西崎彩智の家庭力アッププロジェクト」(第1・3土曜日夕方)が2021年5月1日からスタート。フジテレビ「ノンストップ」などのメディアにも出演
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