古賀茂明さん
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菅義偉首相(C)朝日新聞社
菅義偉首相(C)朝日新聞社

 最近、安倍・菅政権について書いた私の新著が発売されたのを受けて、ラジオやネット番組に呼ばれる機会が増えた。そこで受ける質問で共通するのが、「コロナの感染爆発が起きるとわかっているのに五輪を開催した菅さんは何を考えているのか」という内容だ。

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 元々、五輪開催を2年ではなく1年延期としたのは、安倍晋三前総理だ。五輪を起爆剤に内閣の支持率を上げて、その直後に予定されている自民党総裁選や衆議院選挙を有利に運びたいという思惑である。安倍政権を引き継いだ菅義偉総理も当然、同じ戦略を描く。

 だが、五輪直前の状況は、当初の想定とは全く異なるものとなった。新型コロナの感染拡大を専門家が強く警告する中で、五輪開催を強行し、五輪の最中に感染爆発が起きれば、国民の強い反発を呼び、選挙には不利だ。逆に、五輪を中止または再延期すれば、五輪開催反対が過半を占める世論は、「国民の生命と生活を守るための英断」と評価するだろう。そんな簡単なことを菅氏は理解できないのか、という疑問が湧くのは自然だ。

 私は、「菅さんは確信犯。感染爆発が起きても動じません。高齢者のワクチン接種が進み、高齢者の感染が抑えられれば、重症者はさほど増えず、医療崩壊や死者急増の事態は起きない。起きてもこれまで生じた程度なら問題ないし、万一それを超える事態になっても9月に感染がピークを越えれば何とかなると考えているのです」と答える。

 すると、キャスターは必ずこう聞き返す。「ピークが過ぎるとしても、それで国民は菅さんを許しますかね?」

 ここで、6月25日号の本コラム「菅総理と玉川徹氏 どっちが正しい?」を思い出してほしい。菅総理は、国民は馬鹿だという哲学を持つ。国民は、五輪という娯楽を与えればコロナから気がそれるし、時間が経てば忘れると信じている。だが、今回は、国民の命や生活に直接かかわることだから、簡単には忘れないという意見も多く、私もそうかなと思った。
 

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本当に「夢も希望もない」のか