一方の投手陣もリードを守って逃げ切ったものの、盤石とは言えない内容だった。やはり気になるのがリリーフ陣だ。ドミニカ戦では2番手の青柳晃洋(阪神)、クローザーの栗林良吏(広島)が失点したが、メキシコ戦でも8回に登板した平良海馬(DeNA)が2失点を喫している。しかも四球で走者を出した後に一発を浴びるという最も良くない失点パターンであり、今後の戦い方に不安を残した格好となった。また唯一とも言える左のリリーフである岩崎優(阪神)もここまで登板機会がないが、シーズンのピッチングを見ると決勝トーナメントの僅差の場面でいきなり起用するのはかなり勇気がいるだろう。

 逆にプラスと言えるのがこの日2番手で登板して2回を無失点で抑えた伊藤大海(日本ハム)の存在だ。ストレートはここまで登板したリリーフ投手の中で最も勢いが感じられ、変化球の精度の高さも光った。チームでは先発を任せられているが、大学日本代表では国際大会で抑えを任せられていた経験も心強い。今後は第2先発の柱、もしくは平良と栗林に代わって8回以降に起用するということも十分考えられるだろう。

 様々な課題は出ているが、それでも1次リーグを2連勝で飾り、Aグループの1位で決勝トーナメントに進出できたことは何よりも大きい。そして決勝トーナメントでカギとなるのは首脳陣の柔軟性ではないだろうか。ドミニカ戦とメキシコ戦では同じオーダーで臨み、結果としてそれが上手くいったが、残り3勝するためには様子見的な采配が命取りになることも十分に考えられる。選手を信じて任せることももちろん大事なことだが、好調な選手と不調な選手を見極めて、柔軟に選手起用していくことができるかが、今後の大きなポイントとなるだろう。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員

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