57kg級の川井梨沙子はリオ五輪を制した男女全選手のうち、階級は変更しながらも、唯一世界チャンピオンの座を守っている。今大会も優勝候補筆頭の第1シードとして連覇が期待される。昔から二人で憧れ続けた「姉妹で金メダル」の夢をかなえるチャンスだ。柔道の阿部一二三・詩兄妹の同日金メダルが話題をさらったが、レスリングではあの伊調千春・馨姉妹もなしえなかった夢へ、突き進んでほしい。

 後半は軽量級も楽しみだ。53kgの向田真優にも金メダルの期待がかかる。長らく吉田沙保里が絶対王者として君臨した同階級で、日本はリオ五輪で初めて銀メダルに泣いた(当時は55kg級)。“吉田の後釜”とプレッシャーのかかる立場にいながら、「53kg級で金メダルを取りたいという気持ちが強い」と、この階級にこだわりを持つ。金メダルへの一番の障壁と見られた北朝鮮選手は不出場だが、他にも競合が揃っており激戦は必至。婚約者の志土地翔大コーチとの二人三脚で、これまで信じてやってきたものを、初の大舞台で披露してくれるはずだ。

 最後に紹介するのは、開会式の旗手も務めた最軽量50kg級の須崎優衣。日本チーム最年少の22歳は、紆余曲折を経て、地元千葉県の幕張メッセで初めて五輪の舞台に上がる。

 2017、18年と世界選手権で連覇を果たして期待を集めるも、大きなケガに見舞われる。復帰後は全日本選抜で優勝し、2019年世界選手権代表プレーオフに挑んだが、ここで入江ゆきに敗れてしまう。入江がメダルを獲得すれば東京五輪に内定する厳しい状況だったが、入江は代表権を獲得できず、代表争いは白紙に。全日本選手権では準決勝でリオ五輪メダリストの登坂絵莉を退ける。

 決勝では入江に雪辱。延期で2021年4月に開催された五輪アジア予選では優勝を飾り、見事に出場を決めた。他者の結果による運もあったが、自らの力で、厳しい代表争いに勝ち抜いたことが成長を促し、アジア予選で見せた安定した戦いは、五輪本番へ大きな期待を抱かせてくれた。他国勢からもマークされるだろうが、須崎は主な外国籍選手には黒星がなく、自信を持って臨めることだろう。2012年ロンドン五輪の小原日登美、2016年の登坂に続く3大会連続の最軽量級金メダルは、きっと須崎の弾ける笑顔と共に輝くはずだ。