娘からは、「片付け優先になってしまい、両親が安心安全な環境で好きな物に囲まれて暮らす空間ということを考えていなかった。両親がうれしそうなのを見てホッとした。両親には幸せで長生きしてほしいと改めて思った」と感謝されたという。

 各プロセスを解説していこう。

【ライフラインを確保する】
「持論ですが、健康的な暮らしをつくるには、歩く道はできるだけ広くするのが原則です」
 廊下などの通路にごちゃごちゃ物があると、動きづらいのであまり動かなくなり、同じ場所にいがちになる。ところが歩く道が広がり、ストレスなく動けるようになると、アクティブに暮らせる。家の中でよく動く・動かないでは、筋肉量や筋力へ与える影響も違ってくるだろう。

「ライフラインの確保を優先して、廊下にあるものを別の部屋に移動する。普段あまり使っていない部屋を『物置部屋』として、いったんそこに『寄せる』」

■コードは床に置かない

 高齢でもすぐできるのが、コンセントや充電器の移動だ。廊下のコンセントから延長コードが長く延びていたり、充電器がささったままだと、転倒リスクが高くなる。延長コードにホコリがたまりやすい上、使うたびにしゃがまなくてはならないので、高齢者には負担になる。

「延長コードは上からつるすか、壁に引っ掛ける。充電器は高い位置にあるコンセントを利用する。あるお宅で廊下にささっていた充電器をベッド横のサイドテーブルのコンセントに移したところ、便利になったとすごく喜ばれたことがあります」

【生活動線を見直す】
「日常の生活動線がこんがらがっていると、物の移動がスムーズにいかなくなり、ストレスを生んだり、物がたまっていく“物だまり”が出現します」

「リモート片付け」で親に勧めたいのが、洗濯に関連する動線の見直しだ。洗濯は、「洗濯物を洗う→干す→取り込む→畳む→しまう→着る→脱ぐ→洗濯物を洗う」の繰り返し。洗濯で「洗って干す」までしか考えていないと、取り込んだ洗濯物がソファーの上にたまったり、脱いだ服が散らかったりしがちだ。

 古堅さんは一人暮らしの高齢男性のケースでは、洗濯の動線の見直しからスタートした。洗濯機がある洗面所の隣にある寝室だった部屋を、部屋ごとウォークインクローゼットに変え、寝室は一番奥の和室に移動。ウォークインクローゼットにはハンガーラックを持ち込み、洗濯した衣類はすべてそこで干せるようにし、乾いた後もそのままぶらさげて部屋で着替えられるようにした。さらに寝室のタンスは処分し、衣類はウォークインクローゼットのハンガーラックに移動。「ざっくりボックス」と名付けた三つの箱を用意、棚に並べて下着、靴下、パンツはそれぞれ、ざっくりボックスにポイポイ入れられるようにした。

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