「素晴らしい本を読んだ」という経験と、「1冊きちんと本を読み終えた」という自信は、その後の人生で、自ら足を運んで本を選ぼうとする行為につながります。

 もちろん読んできた本の中には、何が面白いんだろうと疑問に思ってしまうものもありました。

 小説にしてもさまざまな種類があって、内容よりも文章のきれいさにこだわったものや、物語として完結させず、答えを出さないままのものもあります。

 たまに、そうした本を中学生の私が読書感想文の本として選んで読んでいたら、果たして自分は本を好きになっていたかどうか、と考えることがあります。

 今ではそのような本も興味深く読めるのですが、中学生の頃だったら、「つまらない」という感想しか残らなかったように思うのです。その結果、それほど本が好きにはなれなかったかもしれません。

 だから中学時代の読書感想文の宿題で、読むことの面白さを教えてくれた本に出会えたことには、本当に感謝しています。

■「この本を読んでよかった」と思える経験が大切

 私の場合、「たまたま」中学時代に読書感想文のために選んだ本が当たりの本だったわけですが、親が子どもに本を選んであげることで、「たまたま」「偶然」を「必然」にすることが可能になります。

 「読書感想文」のような、本を読まなくてはいけないというこのチャンスを、いかさない手はありません。

 読書の経験が浅い時期に読むものは、子どもにとって、漠然とした「本」というものに対するイメージを、大きく左右してしまうものでしょう。

 それならば、たった一回賞をとることなんかより、「この本を読んでよかった」「違う本を読んでみたい」と思わせることのほうが、今後の人生にもずっと影響してくる、大切なことではないでしょうか。

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