8月初め、横浜市に住む60代の男性の元にある封筒が届いた。
【写真】横浜市民に送られた菅首相からの「手紙」の現物はこちら
「何だろうと思って中を開けると、小此木さんの政策の書かれたリーフレットと菅首相の手紙がセットで入ったんです」
そこには、菅義偉首相が側近の小此木八郎前国家公安委員長(56)の支援を表明するメッセージがつづられていた。
<私の内閣を発足時から支えていただき、個人的にも強く信頼しているおこのぎさんが国政の場を離れることは極めて痛手ですが、市民の安心安全を守り、待ったなしの横浜改革を進め、市民に寄り添う市政を実現できるのは、おこのぎさんしかいません。私は、おこのぎ八郎さんのブレない信念と横浜の未来への責任ある決断を、支持いたします 令和3年7月吉日衆議院議員 菅義偉>
同封されていた小此木氏のリーフレットの表紙には「強い覚悟で横浜市政へ IR取りやめ」という文字が踊り、中面ではカジノを中心とするIR(統合型リゾート)誘致に反対する理由が記されていた。
<横浜市においてはIR誘致に必要な地域の理解、市民の理解が十分に得られておらず、誘致する環境が整っていないことから、今回の挑戦を決意するにあたり、横浜へのIR誘致を完全に取りやめることを決断しました>
8日に告示される横浜市長選は、候補者が史上最多の8人も乱立しており、さらに増える可能性もある。
現時点で立候補の意思を明らかにしているのは小此木氏のほかに、立憲民主党が推薦し、共産、社民の支援も受ける山中竹春元横浜市立大教授(48)、3期12年の現職で4選目を狙う林文子横浜市長(75)がいる。
実質的にこの3人の争いとみられているが、他にも、元長野県知事で作家の田中康夫氏(65)、前神奈川県知事で参院議員の松沢成文氏(63)、横浜市議の太田正孝氏(75)、元衆院議員の福田峰之氏(57)、水産仲卸業の坪倉良和氏(70)が出馬を表明している。
大きな争点は「IR誘致」だ。現職の林氏は誘致推進の立場で臨むとみられるが、他の候補者はほとんどが「誘致反対」を表明。特に、IR推進派の菅氏の側近だった小此木氏が誘致反対に回ったことで、状況が一気に変わった。