このような準備をしておくと、地元の情報が集まりやすくなり、ネットワークも広がっていきます。いざ遠距離介護が始まったときでもあわてなくてすみます。逆に、何の準備もなく遠距離介護が始まると「私が実家にしばらくいなくちゃ無理」という状況になってしまい、仕事に支障が出たり、辞めざるを得なくなってしまったりするケースもあります。
でも、早まってはいけません。仕事を辞めると収入が途絶えるだけでなく、将来の年金も減ります。しかも介護にかかる費用や交通費などで支出は増える一方。
私の知るベテランのケアマネジャーさんはこう言いました。「仕事を辞めても、実際には大したことはできないもの。介護をプロに任せられるよう、働いて収入を得たほうがいい」と。心から同感します。
そうは言っても介護には時間がとられます。職場には自分が介護していることを伝え、公的な支援制度や、会社独自のサポート制度は遠慮なく活用しましょう。制度を利用できるのは正社員だけではありません。一定の条件を満たせば、契約社員やパートでも利用できます。きちんと調べて堂々と制度を利用していけば、それが会社の中での前例となり、あとに続く人のためにもなるのです。
黒田尚子
CFP®1級FP技能士。CNJ認定乳がん体験者コーディネーター、消費生活専門相談員資格を有する。富山県出身、千葉県在住。立命館大学法学部卒業後、日本総合研究所入社。在職中にFP資格を取得。1998年独立。現在は、医療や介護、老後、消費者問題などに注力。がんと暮らしを考える会の理事や、城西国際大学の非常勤講師を務める。