レーダーという近代兵器で敵の位置を正確に把握していた連合国に対し、日本は冷静に事態を見ることなく、軍事の領域の出来事ととらえて戦争の全体を把握する目を失っていた。
そうした情況は国民に知らされず、「一人一殺」など常軌を逸した戦い方から本土決戦に向かうのを止められないでいたのだ。
途中、何度も講和のチャンスがあったにもかかわらず……。
その近現代史は、戦争を知る私ですら、学校で習う際には時間切れではしょられ、学ぶことがほとんどなかった。
ましてや戦争を知らない若い人たちが教育の場で知る機会は奪われ、現在に至っている。そのことがどんなに恐ろしいことか。むしろ、歴史は近現代史からさかのぼって教えるべきではないのか。戦争はなぜ起きたのか、結果を先に原因を後に解き明かしていく。
「関口宏のもう一度!近現代史」は、その部分を埋めてくれるのだ。
下重暁子(しもじゅう・あきこ)/作家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、NHKに入局。民放キャスターを経て、文筆活動に入る。主な著書に『家族という病』『明日死んでもいいための44のレッスン』ほか多数
※週刊朝日 2021年8月20‐27日号