2008年、長女を抱く朴被告(「支援する会」提供)
2008年、長女を抱く朴被告(「支援する会」提供)

 最高裁判決の1週間前。朴被告は面会に訪れた記者に対し、「無駄になっちゃうかもしれないし、バカだなと思うけど、出所に備えて荷物を整理してるんです。子どもや友人からもらった手紙や、差し入れの本が山積みで……」と力なく笑った。

 願いは届かず、帰宅の日は先送りになってしまったが、判決後の面会で朴被告が繰り返したのは感謝の言葉だった。

「裁判を傍聴したお義父さん(佳菜子さんの父)からは『ぱっくん(朴被告)、もう少しで無罪が出ると思うから体に気をつけて頑張って』とメッセージをもらいました。多くの方に応援していただき頭の下がる思いです」

 子どもたちのことは、一人で4人の面倒を見ている朴被告の母がしっかりケアしてくれている。

 今年の初詣で「待ち人来たる」のおみくじを引いた子は、「自分のおかげでパパは年内に帰ってくる」と思っていたため判決を知って泣いてしまったが、「無罪になるためのあと一歩の裁判があるだけだからね」と説明してもらっている。

 判決直後の母との面会では、高校受験を控える長女にかけるべき言葉を相談されたので、「『勉強しろ』なんて言われなくてもわかっている子だから、『いつも頑張っててえらいね』って褒めてあげて」と伝えた。

 朴被告の支援者団体「朴鐘顕くんを支援する会」は、目下の最優先課題として、保釈を挙げ、早速署名活動の準備を進めている。認められれば、差し戻し審の結果を待たずして、家族の待つ家に帰れるからだ。朴被告は「保釈はもちろん期待しています。もしかなわなくても、その後の裁判がスムーズに進んで、子どもたちが幼いうちに家に帰れると信じています」と前を向いていた。

 実は、弁護側は弁論開催決定後の7月26日に保釈請求を出したが、最高裁に却下されている。再度請求して認められる可能性はどのくらいあるのか。前出の水野氏に見立てを聞いた。

「カルロス・ゴーン氏の海外逃亡があってから、重大事件の場合は特に保釈の許可が下りづらくなったのは事実です。ただ、この事件で被告人が逃げるとは考えられないし、有罪判決の基礎も崩れた以上、保釈の可能性は高まったのではないでしょうか。今が決断すべき時だと思います」

 4人の子どもたちが待つ家に、父の「ただいま」が響く日はいつになるのだろうか。(本誌・大谷百合絵)

週刊朝日  2022年12月9日号

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大谷百合絵

大谷百合絵

1995年、東京都生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。朝日新聞水戸総局で記者のキャリアをスタートした後、「週刊朝日」や「AERA dot.」編集部へ。“雑食系”記者として、身のまわりの「なぜ?」を追いかける。AERA dot.ポッドキャストのMC担当。

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