――アカウントを将来、統合するなどの構想は?
新谷:当然統合した方がいいとは思っているし、統合して全体としてどうするかという議論をはじめているところです。縦割りをやめないと絶対ダメだと思う。
――無料広告型の文春オンラインは自社PVが4億を超えているので、収益的には一番、成功しているのでしょう。
新谷:アドネットワーク広告料やコンテンツ収入などをあわせると、月1億円を超える時もあります。雑誌の落ち込みは、デジタル収入で相当カバーはしていますね。
――その半面、「文春砲」という強いコンテンツがあっても、有料会員は思うように増えず、厳しいということでしょうか。今後、月額の有料会員型の週刊文春デジタル、電子版が伸びてきたら、文春オンラインで無料配信している記事の本数が減ることもあり得ます。強いコンテンツを有料化すると、文春オンラインのPVが減るという現象は起きませんか?
新谷:そういうふうに無料と有料とをわかりやすく分けられるとは思わないけど、ネットビジネスってまず人をいっぱい集めないと始まらないと思う。母数が多くないとスケールメリットが生まれないわけですよ。とにかく文春オンラインで読者を幅広く集めると、その読者の中には週刊文春の編集方針に共感してくれる人が一定数いるわけじゃないですか。そういう人達をいかに有料課金に誘導していくのかということで、もともと流入する人の数は多い方が当然いいわけですよ。4億、5億と母数がでかいほうがいいので、その人達がうちのサイトに入ってまた出て行っちゃって終わりという一過性にならないためにはどうすればいいのか。それが次のステップだと思います。
――手ごたえはありますか?
新谷:有料の雑誌電子版やサブスクの方向は絶対、大事だと思うけど、そう簡単じゃないことは確かです。メルマガで編集長のニュースレターを送るとか、読者との関係をさらに深めていくために、有料会員の読者と編集部との間で、濃い情報が飛び交うような空間を作っていくことが大事になってくると思います。月刊文藝春秋も含め、これからどうやってデジタル空間を育てるかなんですよ。タダで読めていろんな人がワ―ッと入ってくるのが無料広告型の世界だけど、その中で一段踏み込んだ質の高い情報を求める人たちのために、どんなサービスを提供できるか、ということが大事だと思います。無料広告型と有料会員型のどちらかを選ぶのではなく、うまく併用していく。
NHKの受信料を払うぐらいなら文春に払いたいと思ってくれる人が一定数いることは確かなので、そういう人たちに有料会員になってもらえるようインフラを整えたいと思っています。権力にも長いものにも巻かれないでリスクをとって戦う文春はメディアとして必要だから応援しようと、取材費の足しに会費を払おうと思ってくれる読者が増えてくれることが理想です。さらに月刊文藝春秋では、エスタブリッシュメント層に向けても質の高い情報、言論空間を構築する。それが私のデジタル戦略ですね。