大宮エリーさん(左)と隈研吾さん(撮影/篠塚ようこ)
大宮エリーさん(左)と隈研吾さん(撮影/篠塚ようこ)
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 作家・画家の大宮エリーさんの連載「東大ふたり同窓会」。東大卒を隠して生きてきたという大宮さんが、同窓生と語り合い、東大ってなんぼのもんかと考えます。10人目のゲスト・隈研吾さんは「僕の建築は負ける建築」と言います。

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大宮:今、どんな建築を手掛けられているんです?

隈:そうだな、チェコのね、ジューイッシュ(ユダヤ)ミュージアム。ホロコーストとか戦争のことを後世に伝えるもので、世界で最も古い現存するユダヤ人墓地でもあって……。

大宮:かなり重要な仕事ですね。

隈:そしてかなり慎重な。ジューイッシュミュージアムは世界各地にあるんだけれど、チェコのはユダヤの重要な拠点でもあり、それを日本人の僕が選ばれるというのは……。

大宮:一体、どうやってコンペで勝ったんです?

隈:ほかはモニュメント性が強いものだったようだけれど、僕らはその場所が交差点の真ん中に見えるから、みんなが集まる広場的なものにした。

大宮:どうしてそう思ったんです?

隈:僕の建築は負ける建築なんです。

大宮:え? 負ける建築?

隈:2000年くらいからコンピューターを使ってぐにゃぐにゃの形が自由にできるようになったんだけれど、僕はそうじゃなく、まわりの関係性で考える。自分だけが目立てばいいっていうのが勝つ建築だとしたら僕のは負ける建築。

大宮:負けるという言葉じゃなくてもいろいろあったのに(笑)。

隈:自分の一番しっくりくる言葉が「負ける」だったんですね。「調和」とかはわざとらしいなと。

大宮:この前、熱海に行った時、カフェ(COEDA HOUSE)みましたよ。巣箱みたいで入りたくなっちゃうのか居心地いいのか、たくさんお客さま、並んでました。

隈:それが一番の目標です。でも、あそこまで受けると思わなかった。

大宮:ですよね。あ、ですよねとか言って、失礼(笑)。だって普通っぽいじゃないですか。

隈:普通だよね。

大宮:でも、かわいくて場になじんでる。できそうでできないですよね。

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