隈:狙ってもできないね。
大宮:枝を組んだような、かといって、ログハウスでもなくて。
隈:まさに巣箱だね。組んだ部材のバランスを取るために、テクニックとしては実は高度なことをやってるんです。カーボンファイバーのワイヤを引っ張って支えているんだよね。見えないところに高度なテクニックがあるんだけど、あんまり見せつけない。逆に隠しながらね。
大宮:あんまり仰々しいと、ウッて萎縮しちゃいますもんね。そういう発想はパッと思いつくものです?
隈:ケース・バイ・ケース。青山の「サニーヒルズ」という台湾のパイナップルケーキ屋さんは話しながら思いついちゃった。木を組んでいったらパイナップルみたいになるぞと。
大宮:逆に、苦戦!みたいなのは?
隈:中国の芸大(中国美術学院博物館)に新しくつくる美術館。きっと目立つ建築がいいんだろうなと考えたんだけど、心の中では何かちょっと違うなと思って。
大宮:(笑)。
隈:自分の中で折り合いがつかなくて、1案でよかったのに、目立つ系2案と目立たない系1案を出した。そしたら、目立たない系が選ばれた。
大宮:目立つ系が選ばれたらどうしてたんですか!
隈:隈流フレーバー、入れてるから。
大宮:何ですか、フレーバーって。
隈:建物に入るとなんとなくなじむっていう味わいね、ある種の渋さ。
大宮:渋さ……。
隈:壁面は大胆にバーンと垂直だけれど、影が入ってくるとなんかこう見え方が変わってくるという。
大宮:太陽の動きと共にニュアンスが変わるんですね。
(構成/編集部・井上有紀子)
※AERA 2023年1月30日号