春夏合わせて甲子園で3度栄冠を手にした名将は「甲子園には14回も来とる。もう飽きたよ。また今年も(ベンチに)入るなんて贅沢っちゅうもんよ。それに暑いのはかなわん。ワシは宿舎でゆっくりテレビ観戦じゃ」と宣言すると、岡田康志監督代理に指揮を一任した。後継者にいち早く甲子園の大舞台を経験させてやりたいという“親心”からだった。

 1回戦の相手は、現ロッテ監督の井口資仁が3番を打つ国学院久我山。延長10回の熱戦の末、池田が5対4で逃げ切ると、“布団采配”の指揮官は「やったあ!」と手を叩いて喜んだ。

 試合後、「岡田監督が初めてのベンチで勝った経験は、将来大きな力になると思う」と文書でコメントした蔦監督にとっては、自らのベンチ采配で勝った以上にうれしい1勝だったに違いない。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2020」(野球文明叢書)。

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