藤井聡太王位が豊島将之竜王を下し、渡辺明名人を破った棋聖戦に続き防衛に成功した。将棋界のトップ2に対して圧巻の戦いぶり。それでも、口から出るのは反省ばかりだ。AERA 2021年9月6日号の記事を紹介する。
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「こちらにとって課題が多いシリーズだった」
8月25日。王位戦七番勝負第5局が終わった夜、藤井聡太王位・棋聖(19)はそう語っていた。そこだけ聞くと、あたかも藤井が敗れて反省の弁を述べているようだ。しかしそうではない。藤井は難敵中の難敵である豊島将之竜王・叡王(31)の挑戦をしりぞけ、王位初防衛を果たしたばかりだった。
藤井は昨年2020年夏、史上最年少17歳で棋聖を獲得。さらには18歳で王位を獲得し、史上最年少で二冠となった。季節はひとめぐりし、今期は初防衛戦を戦うことになった。
「さすがの天才藤井にとっても、今年は試練の夏になるのではないか?」
ファンや関係者からはそんな声も聞かれていた。藤井への挑戦者として名乗りを上げてきたのは、棋聖戦では渡辺明名人・棋王・王将(37)。王位戦では豊島。藤井より序列上位の、将棋界のトップ2で、最強の挑戦者2人といってよい。
しかし蓋を開けてみれば、藤井の戦いぶりは圧倒的だった。
■初戦敗れた後に4連勝
まず棋聖戦五番勝負では渡辺を3連勝ストレートで下す。
「内容はそんなにわるくなかったんですよね」
今年度屈指の名局とたたえられる棋聖戦第3局を、渡辺はそう振り返っている。並の相手であれば渡辺がリードを広げ勝ち切っていただろう。しかし最後は藤井が追いつき、飛車をタダで捨てる劇的な妙手で締めた。