劇場版ではこれまでにないワイヤーアクションにも挑戦した。見どころである鑑定シーンには実際の科捜研の最先端技術も取り入れられている。
「毎回、専門家の指導を受けて、きちんと理解してから演じるようにしています。タブレット端末を使いこなすマリコになりきれるように、私も普段の生活でも、ぼちぼちがんばっています」
沢口さんは大阪出身。3歳違いの兄の影響で、子ども時代は意外にも活発だったという。
「小学生時代の夏休みはスイミングスクールに通って真っ黒に日焼けをしていましたし、中学・高校時代は軟式テニス部でした。字を書くことが好きで、大学に進学したら国語の先生か、字を生かした仕事につくのもいいかなと考えていました」
高校3年生のとき、幼なじみの友人の推薦で「東宝シンデレラ」のオーディションに応募し、人生が動き出す。
「軽い気持ちで臨んだのですが、最終審査に残り東京に行くことになったとき、はじめて迷いました。でも最初は反対していた父が『ここまできたら、チャレンジしてみなさい』と最終的に背中を押してくれたんです」
3万人以上の応募者のなかからグランプリを受賞。その瞬間に「これは私の運命なのだ」と受け止め、心が決まった。同年に映画デビューし、翌年にNHK連続テレビ小説「澪つくし」のヒロインに抜擢される。大きな転機になった作品だ。
「撮影後の打ち上げの席で、脚本家のジェームス三木さんから『やっと女優の卵からヒナにかえったところですよ』というお言葉をいただいたんです。俳優業の厳しさや難しさ、喜びを教えていただいた、といまもその言葉を噛みしめています」
演技経験もなく真っ白なまま飛び込んだ世界。現場でつらい思いもした。
「関西なまりが残っていたことが、私にとっては一番の壁でした。抑揚のないスマートな標準語に感情をのせて話すことがとても難しかったんです。感情が入ると抑揚が入ってNGになってしまう。ベテランの俳優さん方にご迷惑をおかけしてしまうことがものすごくプレッシャーでした。大げさに言うとそれまでの18年間を否定されたぐらいの気持ちにもなったんです。無口にもなりましたし、いつも肩に力が入っていたような気がします」