だが、通常は投手に対する内角攻めも、暗黙のルールではNGとされている。
15年4月25日の広島vs阪神では、藤浪晋太郎に2球続けて胸元付近に投げられ、尻もちをついた黒田博樹が怒りの形相でマウンドに歩み寄るシーンが見られた。
これは、バント処理を焦った藤浪が、指をしっかりかけずに走り出しながら投げた結果、危ないボールになったことを戒めたといわれる。その意味では、「集中力を欠いた状態で内角に投げるな」は、暗黙のルール云々以前に“投手の常識”と言えるだろう。
過度のガッツポーズも、挑発に相当する行為とされる。特に外国人選手は「侮辱された」と強い憤りを感じるようだ。
13年10月27日の日本シリーズ、楽天vs巨人第2戦の6回2死満塁、田中将大は、ロペスを空振り三振に打ち取り、ピンチを切り抜けた。直後、田中は三塁側に右拳を突き出し、ガッツポーズで喜びを表現したが、ロペスは自分に対する侮辱行為と受け止めた。
「チャンスがあったら、やり返そうと思っていた」ロペスは、11月2日の第6戦で田中から同点2ランを打ってリベンジをはたすと、これ見よがしのガッツポーズで挑発し、マウンドに向かって悪口と思われる言葉を何度も吐きかけた。
その後、ロペスの真意を知った田中は「大体人に言うなら自分がやるなよって話」とツッコミを入れたが、日本シリーズでの体験と「頭のいい投手だから、アメリカのルーキーイヤーではしないだろう」というロペスの助言は、メジャー移籍後に役立ったはずだ。
あからさまなガッツポーズには日本人も怒る。その好例とも言える事件が起きたのが、10年4月9日のロッテvs西武だ。
初回に3点を先制したロッテは、なおも1死一、三塁で、福浦和也が自打球を左膝に当て、負傷退場。急きょ、神戸拓光が代打に起用された。
神戸は涌井秀章の高め直球を右翼席にダメ押し3ラン。「何が何だかわからない。もう言葉も出ない」と大感激したが、喜び過ぎがアダとなる。