新型コロナの変異株「デルタ株」は、感染しにくいとされてきた子どもにも感染が広がる。ワクチン接種の対象は12歳以上だが、疑問や不安を感じる保護者は少なくない。「ワクチン」特集のAERA 2021年9月6日号から。
【最新データ】こんなに違う!3社各ワクチンの副反応を徹底比較
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小学校3年生の娘をもつ東京都内の自営業女性(45)は、区のホームページを閲覧するのが日課になった。毎日更新される区内の小学生の新型コロナ新規感染者数を確認するためだ。
「以前は週に1人いるかどうかだったのが、夏休みに入って、『4校で5人が感染』みたいなケースが週に数回出るようになりました。新学期が始まると、どうなるのか心配です」
夫と娘の3人家族。夫婦のワクチン接種は9月以降の見通しだ。子どもの感染が増えるなか、子ども由来の家庭内感染のリスクも無視できなくなっている。
「すぐそばまで感染が迫っていると実感しています。新学期が始まって娘が通う学校で感染者が出れば、自主休校もありかな、と考えています」
AERAは8月中旬にネットで「子どもの新型コロナワクチン接種」に関するアンケートを実施。子どもにワクチン接種させたいと考えている保護者が回答者の大半を占めた。
■判断は感染状況で変化
この結果について、「子どもの感染が増加している今は、『打たせたい』という声が多くなるのは必然。だが、こうした反応は感染状況によって変化していく」と冷静に捉えるのは、厚生労働省の予防接種基本方針部会の部会長代理を務める川崎医科大学の中野貴司教授(小児科)だ。
ワクチン接種のメリットとリスクに対する考え方は個人によって異なる。その判断も感染状況に左右されるというわけだ。では、専門家はどう見るのか。
日本小児科学会は、子どもへの接種は「意義がある」としつつ、「先行する成人への接種状況を踏まえて慎重に実施されることが望ましい」としている。中野教授はこう補足する。
「感染症はワクチンで予防するのが最も有効という原則に基づく判断です。接種対象の12歳以上の健康な子どもたちにどんどん打ちましょう、と呼び掛ける提言ではありません」
中野教授は、子どもの重症化リスクは30歳以上の人と比べ、かなり低いことも考慮に入れるべきだ、とアドバイスする。