男子200メートルバタフライで銀メダルを取った本多灯(ともる)は相模原の大会で好記録を連発しました。私が指導している女子個人メドレー2冠の大橋悠依も長野の大会に出て、午後予選、午前決勝のシミュレーションができていました。
新型コロナウイルスの感染拡大防止対策もあって、選考会後の日本代表が集まったのは2度の合宿だけ。それ以外は所属チームでの強化が中心になりました。五輪期間中のコーチのミーティングでは、もっと一緒にやったほうがよかったという声も出ていました。3年後のパリ五輪に向けて、強化策を練り直す必要があると思います。
コロナ禍の五輪に向けた強化練習は、特別な環境を作って少人数で行うのが普通になっていました。しかし、それも長く続けると行き詰まります。大橋が取材に「たとえ水泳がうまくいっていないときでも、学校に行けば居場所があった」と学生時代の学業との両立の大切さを語っていた通り、学校生活、家族との時間、友人との私生活といった日常と競技生活のバランスを取りながら、目標とする五輪などに向けて集中していくことが大切です。
この連載でも以前書いた「代表選手全体のレベルの低下」という大きな問題もあります。東京五輪の反省をふまえて広く議論を重ね、変えるべきところは大胆に変えて、新たなスタートを切りたいと思います。
(構成/本誌・堀井正明)
平井伯昌(ひらい・のりまさ)/東京五輪競泳日本代表ヘッドコーチ。1963年生まれ、東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。86年に東京スイミングセンター入社。2013年から東洋大学水泳部監督。同大学法学部教授。『バケる人に育てる』(小社刊)など著書多数
※週刊朝日 2021年9月10日号